小児皮膚科

小児皮膚科とは

小児皮膚科

小児皮膚科は、乳幼児や学童期の子どもなどによく見受けられるとされる皮膚症状を診療します。具体的には、アトピー性皮膚炎、じんましん、食物アレルギー、虫刺され、おむつかぶれ、とびひ、手足口病など小児特有の皮膚疾患が中心となりますが、原因が特定できない湿疹やかぶれにつきましてもお早めにご受診ください。

なお小さなお子さんに関しましては、自らの言葉でどんな症状にあるかを伝えることは非常に困難な状況にあります。そのため保護者の方から見て、お子さんの皮膚の状態が明らかにおかしいと感じた場合も速やかにご相談ください。

また、お子さまの皮膚は、潤いがあってスベスベでうらやましいと感じている方もいるかもしれませんが、子どもは大人の肌と比べて非常に繊細でもあります。そのため大人以上にスキンケアは大切なので、保護者の方には、そのケア方法につきましても丁寧にご説明いたします。

子どもによくみられる皮膚疾患

小児皮膚科で扱う代表的な皮膚疾患

乳児湿疹

乳児湿疹とは

乳児の間(生後1年未満)に発生する湿疹を総称して乳児湿疹と言います。乳児は生後一ヵ月が経過すると必要以上に皮脂の分泌が活発になっていき、その中でも皮脂腺の分泌が盛んとされる部位(頭皮、おでこ、眉毛 など)にカサカサとした赤い皮疹、黄色っぽいかさぶたが付着するようになるのですが、これは脂漏性皮膚炎と言われるものです。

脂漏性皮膚炎は、生後8ヵ月~1歳未満の間に大半は自然と治癒していきます。同疾患の対応策としては、入浴時に洗浄力がそれほど強くないボディソープや石鹸を使用して、よく泡立てるようにして洗い、患部はこすらないようにします。その際にかさぶたが浮かぶようなことがあればやんわり取るようにします。このほか、皮膚(主に頬、額、頭など)がカサカサし、かゆみや赤みがみられることがあります。原因としては冬の季節の乾燥による湿疹が考えられますがアトピー性皮膚炎の発症初期ということも可能性としてあります

さらに乳児の時期に発症する湿疹としては、口周りのよだれが原因で皮膚に炎症が起きるよだれかぶれ、おむつを当てている箇所に皮膚炎が発症するおむつかぶれ、食物アレルギーによる皮膚症状(全身の発疹やかゆみ)などもあります。一口に乳児湿疹と言いましても、これだけの原因が考えられるので、皮膚症状が悪化している、治りにくいという場合は、一度当院をご受診ください。

とびひ

とびひとは

主に黄色ブドウ球菌などの細菌類が、アトピー性皮膚炎、虫刺され、あせもなどで発生するかゆみに耐え切れず掻き壊した傷から侵入することで感染する皮膚疾患がとびひです。かゆみの強く出る水疱(水ぶくれ)が発症間もない頃は、顔や手足などに発生しますが、この水ぶくれをあまりのかゆさから指や爪でつぶしてしまい、その液体が放出されるようになると全身に症状が広がるようになります(他の人にも感染します)。その現象が火の粉が飛んで次々と火災が起きる様子に似ていることから一般的にとびひと呼ばれるようになりました。正式には、伝染性膿痂疹と言います。

なおとびひによって発生した水疱は破れていくと、ただれて赤みを帯びている皮膚が露出するようになって、それがかさぶたになって、やがて剥がれ落ちるようになると完治となります。なお、その期間は1週間程度と言われ、夏の季節に起きやすい皮膚疾患としても知られています。

治療では、主に抗生物質(内服あるいは外用)の使用になります。また、かゆみが強いという場合は、抗ヒスタミン薬を用いることもあります。このほかケアについてですが、皮膚症状がある部位であれば、石鹸で優しく洗ってシャワーで流すようにします。さらに水疱が破れてしまったという場合は、その液体が他の部位などにつかないようにすることも大切です。

おむつかぶれ

おむつかぶれとは

乳児が履くおむつの部位に発症する皮膚炎をおむつかぶれと言います。このかぶれは、尿や便に含まれるとされるアンモニアや酵素といった刺激や、おしりを拭くことで生じる摩擦行為などの外的な刺激も加わるなどして、おむつをしている部位に皮膚のただれや赤いブツブツが起きるようになるのです。

皮膚のただれなどのおむつかぶれの症状を発見したら、まず洗面器にぬるま湯を入れておしりをよく洗って清潔に努めてください。そして水分を拭きとるなどした後に亜鉛華軟膏やワセリンを塗るようにします。なお症状があまりにも酷い場合は、弱いステロイド軟膏を塗ることもあります。ちなみに乳児の皮膚のしわの間に皮膚の炎症があるという場合は、カンジダ皮膚炎の可能性があります。自己判断をせず、鑑別をつけるためにも医療機関をご受診されるようにしてください。

アトピー性皮膚炎(小児)

アトピー性皮膚炎とは

身体の至るところでかゆみの強い湿疹が現れるのがアトピー性皮膚炎です。湿疹と一口に言いましても、その種類はいろいろあって、肌に赤みがみられる、ブツブツがある、湿っている、しこりがあるなど様々です。かゆみに耐え切れず、掻き壊してしまうとその部位はガサガサとして硬くなっていきます。この状態を慢性的に繰り返す(良くなったり悪くなったり)ようであればアトピー性皮膚炎が考えられます。なお、生後半年未満の乳児で2ヵ月以上、生後半年以降の乳幼児で半年以上、上記の症状がみられるのであれば、アトピー性皮膚炎と診断されます。

同疾患は生後2ヵ月頃から現れはじめ、頭や顔などに湿り気のある赤い湿疹が生じるようになります。そのほか、胸、お腹、背中などでもみられることがあります。そして1歳を過ぎる頃には、湿疹が発生していた部位は乾燥していき、カサカサになっていきます。また同時期から発生する部位も変化するようになって、肘や膝の内側、首の周囲といった柔らかい部分に起きるようになります。

発症の原因については完全に特定されたわけではありませんが、元々アトピー素因であることやドライスキンな体質であること、また家族の方の中でアレルギーの方がいることなどが影響しているのではないかと言われています。

治療に関してですが、現時点で完治させる方法というのは確立していません。そのため、対症療法としてステロイド系の外用薬が用いられます。このほか、かゆみが強いという場合は抗ヒスタミン薬なども使用します。

じんましん

じんましんとは

じんましんとは、皮膚の一部や全身に大小それぞれの赤いブツブツや盛り上がったむくみが突然現れ、その際に強いかゆみやチクチクする痛みも同時にみられるものの、ある一定の時間(数分~24時間)が経過すると跡形もなく消えていく症状のことを言います。この現れては消えていく症状が数日間で治まれば問題はありませんが、これが一ヵ月以上繰り返されて慢性化している場合は要注意です。

発症の原因については、アレルギー性や非アレルギー性のほか、原因不明の突発性じんましんといったことが考えられています。アレルギー性の場合は、食物(卵・小麦・エビ・カニなど)や薬剤(アスピリン など)、植物、虫刺され(昆虫)などが原因となります。また非アレルギー性としては、コリン性じんましん(汗による刺激や精神性ストレス など)や物理性じんましん(熱、日光、寒さによる刺激、ひっかき傷 など)などがあります。原因が判明している場合は、原因物質との接触を可能な限り控えるなどの対策をとるようにします。なお突発性じんましんであれば、皮膚テストや血液検査などによって原因を特定させるようにしますが、それでも判明しないことも少なくありません。

治療に関してですが、主に薬物療法として抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服するようにします。外用薬に関してはあまり効果がみられません。またアレルギー性のじんましんであれば、アレルゲン(アレルギーとなる原因物質)を極力避けるようにします。このほかじんましんの原因が特定できなかった場合でも、かゆみなどの症状を抑えたい場合は、対症療法として抗ヒスタミン薬の使用が有効です

水痘(水ぼうそう)

水痘とは

感染力が非常に強いとされる水痘帯状疱疹ウイルスに感染(接触感染、空気感染、飛沫感染 など)することで発症します。患者の大半が小児で、全患者の9割近くが9歳以下と言われています。

感染後、約2週間の潜伏期間を経てから発症します。最初はお腹や耳の後ろなど体の中でも柔らかい部位にかゆみの症状がある赤い発疹が現れ、それが半日以上経過すると全身に発症しますが、口腔内にも発生します。その際に38℃前後の発熱もみられます。その後3~4日後に発疹は水ぶくれとなって、次第にかさぶたへと変わり、これが剥がれることで完治となります。発疹からかさぶたが剥がれるまでの期間は約3週間ほどです。

治療は主に対症療法となります。具体的にはかゆみ止めの外用薬を使用する、膿がある場合は抗生物質の外用薬を塗るなどします。このほかウイルスが体内で増殖しないように抗ウイルス薬を使用することもあります。

麻疹(はしか)

麻疹とは

一般的には、はしかと呼ばれる麻疹は、感染力が非常に高いとされる麻疹ウイルスに感染(飛沫感染、接触感染、空気感染 など)することで発症する病気です。10日ほどの潜伏期間を経てから、38℃程度の発熱、のどの炎症、くしゃみ、咳、鼻水、結膜炎といった症状がみられます。早ければ生後半年ほどで罹ると言われますが、多くの場合1歳を超えてから発症するケースが大半です。

これらの症状が現れて3日ほど過ぎてから口内に白い斑点(コブリック斑)、顔の周りに赤い発疹ができ、その発疹は身体中に広がるようになります。やがて発疹は暗い色となって時間をかけてなくなるようになります。その頃には熱も下がるようになって快方へと向かうようになります。

麻疹に感染することで注意しなければならないのが合併症で、実は発症によって、肺炎、中耳炎、脳炎などに罹りやすい状態になるのです。発疹が現れてから3日以上経っても熱が下がらない、熱は一時的に下がったものの急に上がってきた、おしっこの色が濃いという場合は速やかに医療機関をご受診ください。

治療については、主に対象療法となります。熱があれば解熱剤、咳が出れば咳止めを使用します。このほか合併症を予防するために抗生物質を使用されるケースもあります。

風疹

風疹とは

風疹ウイルスに感染(感染者のくしゃみや咳による飛沫感染 など)することで発症する病気で、2~3週間の潜伏期間を経た後に発症します。主な症状は、38℃前後の発熱と顔や首などに見られる赤くて小さい発疹です。なお発疹はかゆみを伴い、やがて手足など全身に広がるようになります。このほかにもリンパ節(耳の後ろ)が腫れて痛む、咳、のどの腫れ、目の充血などもみられます。風疹は、主に4~10歳の小児に発症しやすいと言われています。

なお風疹は三日はしかとも呼ばれ、これといった治療をしなくても3~4日ほど安静にしていれば自然に治るようになるなど、子どもが罹っても軽症ですむことがほとんどです。ちなみに熱が高ければ解熱剤を使用することもあります。

なお、妊娠3カ月未満の妊婦が感染してしまうとそれが胎児に感染して、出生後に白内障や難聴といった障害が起きることがあります。これを先天性風疹症候群と言います。このようなリスクを避けるために現在、風疹ワクチンは小児の定期接種のひとつでもあるわけですが、それでも子どもが感染してしまったという場合は、妊婦に近づけないようにしてください。

突発性発疹

突発性発疹とは

主にヒトヘルペスウイルスの6型と7型が原因とされますが、同ウイルスは健康体の人の体にもあるものです。そもそも赤ちゃんは、母体から様々な免疫抗体を授かって生まれるのですが、その抗体は時間の経過と共に減弱していきます。その過程において、赤ちゃんの体内に同ウイルスが入り込んで発症すると言われています。この疾患は主に生後6ヵ月から1歳までの期間に罹患すると言われています。

突発性発疹は、10日間ほどの潜伏期間を経てから発症するとされ、まず39度付近の高熱出ます。熱は3~4日で下がるようになりますが、そこから発疹(紅斑)が腹部を中心に発生し、それが全身にみられるようになります。多くは発疹が出ることで、突発性発疹と診断されるようになります。なお発疹による自覚症状(痛みやかゆみ)といったものはなく、3~4日ほどすれば自然と消えるようになります。ただ稀ですが発熱時にけいれん(熱性けいれん)がみられることもあります。

なお医師から同疾患であると診断された場合、何か特別な治療を行うことはありません。熱が高ければ解熱剤を用いる程度です。

伝染性紅斑(りんご病)

伝染性紅斑とは

一般的にはりんご病と呼ばれています。パルボウイルスB19に感染(飛沫感染、接触感染)することで発症するとされ、2~3週間の潜伏期間を経た後、まず両頬に真っ赤な発疹が現れるようになります。これがまさにりんごのように赤くなることから「りんご病」と呼ばれるようになりました。頬が赤くなることで発症に気づくことがほとんどですが、その頃には感染力はなくなっています。このほかにも、二の腕や両脚といった部位にも赤い発疹はみられるようになります。これらの症状は10日ほどで消えるようになります。なお、頬が赤くなる前に風邪あるいは微熱がみられることもあります。

感染者の多くは6~12歳の間に発症するとされていますが、成人になってから発症することもあり、その場合は症状が重くなります。

治療についてですが、とくにこれといった治療は行いません。先にも触れましたが、1週間~10日ほどで自然と治癒するようになります。かゆみの症状がある場合は、かゆみ止めを使うなどの対象療法を行うようにします。

手足口病

手足口病とは

エンテロウイルスやコクサッキーウイルスに感染(飛沫感染、経口感染)することで発症します。3~5日程度の潜伏期間を経た後、主に口の中や手足に小さな水疱がみられるようになります。手足については痛みやかゆみなどはあまり出ませんが、口内の水疱が潰れるなどすると痛みが出ることがあります。発熱については、出るときもあれば出ない場合もあります。そのほかの特徴としては、夏の季節に流行しやすく、4歳以下の子どもによくみられますが、成人も罹患することがあります。

同疾患は特別な治療をしなくても1週間ほどで自然に治癒するようになります。その間に熱があれば解熱剤、口の中がひどく痛む場合は口内炎用の軟膏を塗るなどの対症療法を行うこともあります。なお、可能性としてはそれほど高くありませんが、合併症(無菌性髄膜炎)を起こすこともあるので、熱が上がって嘔吐をしているなどの様子がみられたら医療機関を受診するようにしてください。

あせも

あせもとは

あせもとは、汗腺にアカやホコリなどが詰まってしまい炎症を起こしている状態を言います。髪の生え際、首、ひじ、わきの下、ひざの裏などよく汗を掻くとされる部位で発症することが多いです。

発症間もない時期は、白っぽい発疹が現れますが、この時点では炎症しているわけではないので、痛みやかゆみといった症状もありません。その後症状が進行して、炎症が起きるようになると白っぽかった発疹は赤くなり、かゆみの症状が強く出るようになります。そして、このかゆみに耐え切れずに爪を立てるなどすると悪化させ、とびひを発症することもありますので、早めに対策しておくことが大切です。具体的には、こまめに汗を拭く、シャワーで汗を洗い流すといったことをします。

なお炎症の症状がひどい、かゆみが強いという場合は、皮膚科をご受診ください。炎症が強ければステロイドの軟膏を軽症であれば非ステロイド系の外用薬を使用します。

頭じらみ

頭じらみとは

アタマジラミとは、頭皮に寄生する吸血性の虫のことで、これが頭髪などに寄生するようになると、強いかゆみが起き、炎症が起きるようになります。なおアタマジラミは成虫になっても2~3mmほどと小さいものですが繁殖力が強く、頭髪に卵を産むなどして数を増やしていきます。

またアタマジラミは、人から人、物を通して別の人に頭に移るなどします。そのため、人と頭をくっつけない、添い寝をしない、帽子、ブラシ、タオル、寝具などを共有しない、といった対策も必要です。

この虫が頭髪にいる場合は、目が細かいとされるすきぐしを使用して、根元から毛先まで丁寧に髪をすくようにします。そして専用のシラミとりシャンプーで、髪の毛だけでなく、頭皮や耳の後ろまで、しっかり洗うようにします。